[響~小説家になる方法~]マンガ大賞受賞作の作者は主人公似の強烈キャラ 出版社ともケンカ別れも



「マンガ大賞2017」の大賞を受賞した柳本光晴さんのマンガ「響~小説家になる方法~」の描き下ろしイラスト

 マンガに精通する書店員らが「その年一番の面白いマンガ」を選ぶ「マンガ大賞」。今年の大賞に、柳本光晴さんのマンガ「響~小説家になる方法~」が選ばれた。3月28日の授賞式に登場した柳本さんは、スーツ姿にネクタイという”常識人”の見た目とは裏腹に個性的なトークで会場を沸かせた。同作を生み出した経緯、独創的な考えとともにそのコメントを紹介する。

 ◇何もないから「何でもあり」

 「響~小説家になる方法~」は、現在、小学館の青年マンガ誌「ビッグコミックスペリオール」で連載中。ある文芸編集部に革新的な内容の投稿原稿が送られてきて、編集者の花井は「世界を変えられる」と確信し作者捜しに乗り出す。そして見つけた15歳の少女・鮎喰響(あゆくい・ひびき)は、デビュー作品で芥川賞と直木賞のダブルノミネートを果たし、世間を騒然とさせる……というストーリーだ。

 マンガ大賞の授賞式に作者の柳本さんは、顔を写さないという条件で登場した。ネクタイを締めたスーツ姿で、物静かな好青年という第一印象。正直、特別変わった様子はなかった。ところが、柳本さんのトークが始まると、独自の理論や考えが見え隠れして、うならされた。

 「圧倒的な天才を書きたかった」という柳本さんは「響~小説家になる方法~」の誕生について、初代の担当編集者と題材を決めるとき、何が描けるかを自分に問いかけたものの何もなかったため、逆に「何でもありだ」と考えたという。

 野球やサッカーといったマンガでメジャーな題材は、あらゆる視点の作品があり、既に素人では手が出せないことから、「誰も手を出してない、世間的にはメジャーだけどマンガではマイナーな題材はないか?」と考えて、文芸マンガにたどり着いたという。そして、主人公・響の文章に驚く人の姿を描くことで、響の圧倒的な才能を表現し、説得力を持たせることに決めた。文芸に対する取材、下調べはあまりしなかったといい、マンガ家としてのひらめきと才能を感じさせた。

 ◇強烈なヒロインと似ている作者

 マンガを読むと、強烈な個性で周囲を振り回す響の姿が印象的だ。響は見た目はおとなしそうな少女だが、行動はエキセントリックそのもの。小説を応募するときも連絡先は書かない。気に入らない本があるという理由で、部室の本棚をひっくり返す。他人の作品を目の前で容赦なく批判する。果ては、会見の場でカメラマンを蹴る……という具合だ。

 ところが強烈なヒロインについて柳本さんは「自分では強烈な子ではなく、可愛い子を描いているつもり」と明かした。

 28日の会見で、司会を担当したニッポン放送の吉田尚記アナウンサーは「(柳本)先生は、(主人公の)響に似ていますね」と指摘。柳本さんは、作品の参考にするために芥川賞と直木賞の会見に行こうと、実際の会見当日、会場のホテルにぶらりと足を運んだものの、アポなしだったため会見場の部屋も分からず帰ってきた……というエピソードを紹介して、「事前に担当さんにお願いして(会見に入れるようにして)おけばよかった」と反省の言葉を口にした。その予測できない行動に、吉田アナは「響(ひびき)感、半端ない」と突っ込んだ。

 柳本さんの個性あふれるエピソードは、他にも紹介された。スカウトをされて読み切りを掲載した最初の出版社とは、長期の連載を望む出版社側と言い争いになりケンカ別れをしたという。さらに、同作の2代目担当編集で、会見にも登場した小学館の待永倫さんも、柳本さんにあいさつをするとき、謝恩会で酔態をさらしたことから「あなたには担当編集になってほしくなかった」とズバリと言われたことを明かした。柳本さんの個性的なエピソードが明かされるたびに、会場からは笑いの声が上がった。

 既にアニメ化や映画化などの打診もあるなど、今後の展開にも期待がかかる「響~小説家になる方法~」。柳本さんが強烈な個性を発揮した作品は、コミックスの売り上げが急増するといわれる「マンガ大賞」の受賞を受けて、どこまで部数を伸ばせるかに注目だ。


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