急速に増えるビオの店 食の見直し活発化するイタリア(日経トレンディネット)



 自らを“定住旅行家”と呼んで、ホテルなどの宿泊施設ではなく、世界中の現地の家庭に滞在をし、その土地の文化や習慣、人の生き方に触れてその様子を伝える私の活動。今回も前回のコラム同様、イタリアからのちきゅうトレンドをお届け!

【関連画像】イタリア国内で増え続けるBIO(ビオ)ショップ

 イタリアでは、食を見直す動きが活発化してきている。地域ごとに存在する伝統的な食事のあり方や食材を見直すスローフード運動や、有機栽培・飼育された素材やグルテンフリーの商品を販売するBIO(ビオ)のお店などが、イタリア全土で急速に増えているのだ。また、一般的なスーパーマーケットでもそのような商品が多く扱われている。こうした流れは日本でも数年前からあるが、イタリアではより多くの人びとが実際の生活に取り入れているように感じる。

●ローマ時代から続く、伝統的なイタリアの食事

 食の都イタリア。2010年に国連教育科学文化機関の無形文化遺産に登録された、世界中で最も親しまれている料理の一つ、イタリア料理。その歴史は古代ローマ時代に始まり、イタリア人の伝統的な長時間にわたる食事スタイルもこの頃に築かれた。当時は、一食につき、2、3時間をかけるのが一般的で、満腹になると嘔吐して、またお腹を満たしていたと言われている。

 世界三大料理の一つとされている現代のフランス料理の原型もイタリア料理だ。フランス王アンリ二世がイタリアのメディチ家のカテリーナと結婚したことをきっかけに、イタリアの料理法を基にした現代のフランス料理へと変化を遂げたとされている。そんな長き歴史を持つイタリアの人びとの食事へのこだわりは、家庭の味を超えて、それぞれ個人が持つほどである。

●時代と共に変化する食事スタイル

 食事を大切にするイタリアでも、近年米国からのファスト・フードの流入や、女性の働き方や家族構成の変化などと共に、食事の価値が疎かになってきていた。イタリアの食事といえば、昼食が1日で最もしっかりとした食事であり、昔から家族そろってお昼に2時間ほどにわたってゆっくり摂るのが当たり前だった。田舎では今でもその習慣が残っている地域もあるが、大都市では、昼食時に自宅に戻って家族と食事をすることも減り、会社の休み時間に簡単なもので済ませてしまう人も多い。

 その一方で、伝統的な食事の摂り方や食材に対して見直す動きも活発になってきている。添加物や生産者の分からない食べ物やファーストフードなどの食事に対して、もう一度自分たちが口にする物をしっかりと把握し、その土地の伝統的な食文化を意識するスローフード運動。地球環境や動物素材の使用に対する価値観が生んだ哲学 “ビーガニズム”。また、オーガニックやバイオの食品のみを扱う、Bioitalia(ビオイタリア)のお店が急激に増え、食に対しての人びとの関心が高まっている。

 定年退職してから、スローフード運動を始めたウンブリア州ペルージャ県で活動するマリア・リタさんに、イタリア人の食生活の変化について伺ってみた。

Q:スローフード運動というのは、どんなものでしょうか?

A:スローフード運動は、イタリアのピエモンテ州で始まった国際的な社会運動です。現在、世界160カ国でその運動が広がっており、世界規模の組織です。スローフードは、ファーストフードの逆の意味にも捉えられ、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動です。Buono(ボーノ、美味しく)、Pulito(プリート、清潔で)、Giusto(ジュースト、正しく)をモットーに活動しています。

Q:マリア・リタさんはなぜこの活動を始めたのでしょうか?

A:私は定年するまでずっと銀行で働いていました。その頃から、食事や料理などが好きで、興味があったんです。定年後に何もしないで家に引きこもるのは考えられなかったので、この活動を知って、始めることにしました。2000年からこのスローフード運動を始めました。この活動を通して、コミュニティーが作られたり、100年前から受け継がれているこの地域の食文化やレシピを守ることができています。

Q:人びとの反応はどうでしょうか?

A:私が始めた頃よりも、最近のほうが“良いものを食べる”ことを意識する人が増えてきたと思います。少し値段が高くても、生産者や生産工程がしっかりしていて、信頼できるいい商品を買おうとする人たちが多くなりました。それは、情報社会になっていろんなことが知れるようになったり、食べ物によって体調が悪くなる人を身近に感じるようになっているからだと思います。また、消費者だけでなく、生産者側も丁寧に作ることや、体に悪影響があるものを生産途中で使用しないなど、メンタリティも随分変わってきたと思います。

Q:人びとに知ってもらうために、どういう工夫をされていますか?

A:イベントなどで、有名シェフにスローフードをテーマにした料理を作ってもらい、地元の人に食べてもらう機会を作っています。地元食材を違う形で見つめ直すことができ、新しい料理の仕方の可能性を実感することができます。地元の人はそれを食すことで、土地へのさらなる愛着やアイデンティティーを持てる機会にもつながっていると思います。




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